【映画から学ぶVol.6】映画「ザ・エージェント」~顧客満足の追求~

映画から学ぶ
ぴ。
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皆さまこんにちは。中小企業診断士のぴ。です。
映画から学ぶ第6弾として、「ザ・エージェント」に学ぶビジネスに重要な基本スキルをご紹介します!

本記事は、「月間『企業診断』2024年1月号」で掲載して頂いた内容を元に書いています。

(ウェブサイト:同友館オンライン、著作名:企業診断編集部)

より多くの皆様に読んで頂きたく、当ブログでもご紹介させて頂きます!

映画「ザ・エージェント」(原題:Jerry Maguire)

Jerry Maguire – Trailer

 

~あらすじ~

大手スポーツ・エージェント会社に勤めるジェリーは、利益ばかり追求する今の仕事の在り方に疑問を持ち、会社に提案書を提出するもクビになってしまう。

ただ一人、共感してくれた会計係のドロシーとともに意気揚々と独立するが、契約できたのは落ち目のアメリカン・フットボール選手ロッドだけ。焦るジェリーはスター選手の獲得に走るものの、かつての同僚に奪われてしまう。

自信をなくしかけた彼を励ましたのは、ロッドの「俺はお前についていく。俺たちはひとつだ」という言葉だった……。

基本的に映画からビジネスに関して学ぶという視点で書いておりますが、ややネタバレを含む内容となっておりますので、ご注意ください。

はじめに

 映画「ザ・エージェント」は、プロスポーツ選手を裏で支えるエージェントのビジネスを描いたヒューマンドラマである。

 会社をクビになり独立したスポーツ・エージェントが、自身の理想を現実にさせるために奮闘する姿に、皆さんもビジネスにおける成功とは何かを考えさせられるだろう。

企業の目的は利益の追求か

 物語は、主人公のジェリーが今の満ち足りた生活に疑問を投げかけるところからスタートする。ジェリーは、全米一のスポーツ・エージェント会社に所属し、花形スター選手をクライアントに抱え、私生活でも婚約者がいて順風満帆だ。ある日、一人の選手が試合で脳震とうを起こすが、ジェリーはビジネスを優先して選手に休養をさせなかった。それを知った選手の家族は大激怒。子供から「悪魔」とまで非難されてしまう。ふと我に返ったジェリーは、「僕はスーツを着た人食いサメ?本当にこのままでいいのだろうか」と自問自答する。

 利益ばかり追求する今の仕事の在り方に嫌気がさし、良心に目覚めたジェリー。意を決し、徹夜で仕上げた提案書を同僚達に配布する。「エージェントが抱える選手の数を制限し、利益よりも選手の人生を大切にする」という本来の理想の精神に立ち返ることを訴えた内容だ。一人のエージェントが多くの選手を抱えていてはサポートが疎かになり、選手の人生を狂わせてしまうとジェリーは考えたのだろう。しかし、会社にとっては利益を縮小しかねない大問題である。ジェリーの思いも虚しく提案書は却下され、あっけなくクビになる。そして、ジェリーは掲げた理想を現実にするため、会社を辞めてフリーのエージェントになることを決意する。

 このことは、企業が顧客満足を無視して短期的な利益追求に陥ってしまった結果、健全な組織風土を壊し、優秀な人材が流出したといえる。もちろん、企業活動を継続するには利益を出す必要がある。とはいえ、利益は企業の目的ではなく、存続の必須条件だ。では、企業の目的とは一体何なのか。
 ピーター・F・ドラッカーの名言に、「企業の目的は顧客の創造」とある。顧客の創造とは顧客満足であり、顧客に価値を提供し続けることが結果として長期的な利益獲得の源泉になると示唆している。利益は企業存続の必須条件だ。
 一方で、本来の目的を忘れ、短期的な利益の追求に偏り過ぎると、組織のコミットメントが低下するだけでなく、顧客を無視した営業手法やコンプライアンス違反に繋がる恐れもあり、社会的な信用を失いかねない。

 ジェリーは、同僚の皆が「心の中で思っていても口に出せないこと」を代弁したものの、組織から追い出されてしまった。ジェリーの提案手段にはいささか傲慢な印象は拭えないが、きっと読者の皆さんも彼の信念や行動に共感できるはずだ。

理想と顧客満足のギャップ

 掲げた理想を現実にするため、信念をもってビジネスに奮闘するジェリーだが、現実は甘くない。これまでは会社の後ろ盾で仕事をしてきたが、フリーになった途端に状況は一変する。大学フットボールの花形選手フランクと契約寸前までいくが、元同僚に選手を奪われてしまうのだ。
 その矢先、唯一のクライアントであるアメリカンフットボールの選手ロッドから「今より条件の良いチームを探してほしい」と依頼が入る。すでに選手としてのピークは過ぎたと言えるロッドに対して、ジェリーはお金よりも選手の人生を大切にしたいという信念で接するが、ロッドは身体がボロボロになってもいいから家族を養うための生活費を稼ぎたいと主張する。

 本作からは、顧客と信頼関係を築くことの重要性を学べる。どれだけ優れた理想を掲げていても、顧客の思いに共感し寄り添うことができなければ、顧客に価値を提供することはできず、顧客満足は生まれない。ジェリーは理想と顧客満足のギャップに悩み苦しみながらも、ロッドと正面から意見をぶつけあうことで二人の信頼は固くなっていく。
 そして、ジェリーはビジネスを成功させるうえで本当に大切なことに気づく。選手の理想の実現をサポートをすることができれば、自身の理想も満たされる。選手の人生を大切にすることが自身の信念なのであれば、選手に寄り添い、ともに成功に導いていくことが本当の理想なのではないかと。

おわりに

 理想を追い求め、会社や組織に提言するのは簡単ではなく、ときには無謀とも言える。理想と現実が異なるのは当然だからだ。しかし、それまでと異なる環境に身を置くことで、新しい自分を見出すことが出来るかもしれない。フリーのエージェントとして顧客満足の追求を自らの理想としていくジェリーの姿は、プロのコンサルタントとしてクライアントの満足を追求する私たちに、そのことを教えてくれるだろう。

 本作には、ロッドがジェリーに思いもよらない言葉を伝え、最後にはジェリーも同じ言葉を絶叫する印象的なシーンがある。本作を鑑賞される際には、ぜひ注目していただきたい。

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